ワタシはかわいくなくなくない いざ男と寝ようというときに、思いっきりゲロを吐いて「かわいいやつだな〜」と言われた覚えがある。 全くその言葉は不可解で、世界中が逆さまになってぐるんぐるんと回った。と思ったらその場でぶっ倒れた。急性アルコール中毒。 真性アル中で病院に監禁されたかなり前の話しである。 それにしても、ゲロを吐いている姿がカワイイと言うとはいったいどうしたことか。 ゲロを吐きながら、終電のために突っ走るという神業を見せたあのサラリーマン(なぜか八つ墓村を彷彿させた)は、かわいすぎると言うことになるではないか。 「私のどこが好き?」 「かわいいから」と言ったマヌケな男もたまにはいるが、それはそこまでの男である。 かわいいものはとっても好きだけど、そんなマヌケな言葉で喜ぶほど私はかわいくはないのですから ファック後のコーヒー SEXをしたトタン、急になれなれしくなる女がいるそうだ。それを喜ぶ男どもも沢山入るだろうが、私が男ならばそれはある意味、ホラーだと思う。ビョーキをうつされたほうがまだマシだ。ネタになる。 この反対に初めて合体をした次の朝、寝ていた私は急に男に起こされ 「コーヒーいれてくれよ」 と言われたことがあるが、それはホラーではなくてコメディだろう。 私は、目の前に差し出されたコーヒー豆の缶を突っ込まれる己の姿を想像して顔を赤らめこう言った。もちょっとサイズの小さいものを、のニュアンスを込めたつもりで。 「……バカ」 バカはどっちだ? 男はコーヒーが飲みたかったのである。夜明けのコーヒーっつーわけだ、アホか。やっぱりバカはこの男の方だ。 ヤツはすでに、パジャマとおぼしきシャツを着て私が昨日めちゃくちゃにしたはずの髪の毛もなぜか整えられている。私はと言えばすっぱだかである。60%の確率でヨダレもたらしていたはずだ。まだ夢の中だったのである。 どちらが入れるのがより自然か、バカでなければわかりそうなもんだろう。 コーヒーいれるのがイヤなのではない。命令されたのがイヤなのではない。私はコーマンの所有者だがゴーマンではない。ヤッたトタンに豹変したその男が問題なのだ。 「なぜこんなコーヒーバカ男とヤってしまったのか、いや、あたしイッてないから、ヤッたとはいえないか」 ゴーインになかったことにした。そうでもしなければ私の先ほどの発言は恥ずかしすぎる。 イチローは表情をぴくりとも変えずに 『変わらなきゃも変わらなきゃ』 と言っていたが、人は何かをきっかけに大きく変わったりするからややこしい。 変わることはイイコトなのかも知れないが、私はあまりにもトートツに人が変わるとビビってしまう。 気味が悪い。 ただし、外面がどんなに変わっても不気味だとは思わない。理由が明白だからだ。とくに女はメイクや髪形、関根クリニック(ウチの近所の美容整形)などでガンガン変わるし、それらパーツが変わっても、おつきあい差しひかえようとは思わないからだ。 昔、天然パーマ、いわゆる剛毛・縮れ毛の同級生がいて非情にも『ライオン』と呼ばれていた。 ライオンは持ち前の明るさで、マン毛と区別がつかないその髪の毛をネタに自らを笑い飛ばすほど潔く気持ちいい女の子であった。 卒業後のクラス会、彼女は天使の輪つきのストレートヘアを風になびかせながら背中丸出しのワンピースを着てきたことに男子は驚喜狂乱していたが私はビクともしなかった。そんなのアリだからだ。 ライオンはさすがに、ハナクソを丸めてピンッと飛ばす過去の栄光をご披露してくれはしなかった。そりゃそうだろう、マン毛がサラサラに進化したら意外とビューチフルだったということに気付き乱舞する男達の前で、ハナクソ・ピンッは、あまりにも残酷だ。『やさしさ』で、ある。 それでも手紙の最後には必ず「lion」とサインしてしまうと言う彼女の気持ちよさは、何も変わってはいないのである。 しかしその名付け親が私であることはあえて言わずにおいた。『やさしさ』で、ある。 一方で、かつて 「カンチョー!」 と叫びながら廊下を走りまわり、女子の穴(前アリ後ろアリ)に一日5回は指を突っ込んで喜んでいた男の子が、私の下ネタに、 「ははは……相変わらず下品だなあ〜」 とケーベツのまなざしを向けたときの方がどれだけ驚かされたことか。クラス会でのもう一人の主役、S男だ。 げっ下品っスか〜!? 毎日毎日自分のチンコのリアルな絵を描いて、(毛の生え方までビミョウに描いていた)女子に見せては嫌がられていたS男クンが、女子の体操着を無断で拝借してムリヤリ着てはよろこんでいたあのS男クンが私に向かって下品!? 彼に何があったのか。何が彼をそうさせたのか。 実に不気味で聞きたくもないのだが、卒業後、S男がT子の車に忍び込んで襲おうとしたことや、S美と一緒にいる時、一人のチンピラーノに絡まれて土下座して謝ったことなどを皆に事細かにホーコクしておいた。 『やさしさ』で、ある。 愛しているといわないで 女友達T子が婚約者を連れてきた。初めて見る男である。 どうせ金に困っていたのだろう。オカンは必ず私の友達が来るとご飯を作るのがめんどうだから外食に誘うのだ。オカンが 「しゃぶしゃぶでも食べに行かない?」 と言った時のT子、エンリョの仕方がわざとらしい。 「そうだね、パーッとM君(婚約者)におごってもらおうか、パーッと」 私の発言を、オカンは慌てて阻止した。 「何言ってんのっ!大丈夫よ、私がおごるから」 T子は笑っていた。M君は聞こえないフリをしていた。 パルコの『シャブリ』と言うやばい名前の店で、ワタクシは長い箸で必死でつかんでいた春雨の束をつい離してしまうという屈辱を味わった。 原因はオカンの発言である。 「M君、T子ちゃんのこと…… 愛してる?」 アゼンである。 中年のババアはとつぜんとんでもないことを言うから恐ろしい。 「はあ?なにバカなこと言ってんの?ママ」 私は春雨をかき集めるのに必死であったが我ながらナイスフォローだ。この調子で上手く春雨を全部ゲット できればいいのだが……。 「はい。愛してます」 再びアゼンである。 は……は……はるさめがああー!このM君の発言で、私はかき集めつつあった春雨の全てを逃してしまった。 もうー怒った。ここは教会じゃない。なんなんだ、この人たちは。佐竹マサユキを彷彿させるまっすぐな、しかし不自然な瞳のM君、たったこの前まで一日3回はヤりまくっていたT男と別れて泣いていたくせにデレデレのT子、納得してなんだか得意げなオカン……。 なんだなんだみんな、おかしいんじゃないの?それとも私がオカシイのか。今、もしかして社会は愛なのか。キョンキョンのダンナ永瀬くんに惑わされているのか。いや、違う。Mよ、君は永瀬くんじゃない。間違っても、似ても似つかないではないか。 私以外の全員が自分に酔い、しゃぶしゃぶどころではなさそうだ。 こうなったら春雨なんてチャチなことは言わない。さっき自分のノルマを食ったがエビやハマグリ、全員の分を食ってやる。そうでもしなければやってられん。 そういえば以前にも似たようなシチュエーションがあって、私の友人と結婚したその男に未だになじめないことを思いだした。 「ねえT子、結婚やめれば?」 つい口にしたその言葉に、一同がアゼンとしたが、さっきの私のアゼンに比べればセコいもんである。 だって私は本心を口にしただけなのだから。 素直=半殺し 「素直じゃねえなあ」 と、昨日心(と悪意)を込めて言われた。 素直になりたい〜とかなんとかは、良く歌詞に登場する。 素直な子はかわいくって純粋で目ん玉の中にはキラキラのお星様を持って、なんだかとってもスバラシイことだとされている。 しかしどうだろう。かつての素直な幼少期、ビターな経験ばかりが思い浮かぶ。 「おばちゃ〜ん!おばちゃんの顔って鬼みたいだね」 「お年玉500円なんてシケてるね」 「おじちゃんの息ってウンコの匂いがするね」 「ここのうちの子に生まれてこなくてよかったなあ」 そのたびに『包丁ダーツ攻撃』や『百発百中ハイザラ投げ』、『掃除機たたき』など、オカンの得意技ばかりが増えていくのであった。 このようにデンジャラスな体験を経て、『素直→半殺し』と言う構図が私の脳にインプット、そうだ、思えば小学校の時、あのサラサラのストレートへアーにオカンがパーマをかけて失敗したあたりから素直一直線だった私の性格までもがアフロになってしまったのだ。 私はたしかに根性も、首根っこの骨も、親知らずまでもがひん曲がっている。おまけにガチャ目だ。 しかしこのパーツや性格を、神様かなんかがそっくりお取り換えしてくれると言っても私は首を百回くらいヨコに振る。そして目が回る。峰不二子ならちょっと考える。 私は誰にも変えられない。 素直になった私をスキになる男などに、私は用はないのである。 ほったらかしはお気に入り ここんとこ気に入っていた男はなかなかいい匂いを放っていたがとうとう別れてしまった。 わたしの耳たぶに開けられた小さな穴を放置していたら、 「そこの二つ、ヘンだよ。小さいのでもしておけば」 と、血の色をした石のピアスをくれたからである。 口紅のテカリ具合も指摘された。 たしかその前はタバコの本数だ。 エスカルゴを殻ごと指でつまんでズズズっとカタツムリのエキスを飲んだ時も、浮浪者のオッサンから雑誌を購入したときも、男は笑っていたが 「やだなあ」 と確かに言った。 それから男は、私のことが気になる、とも言った。 ヨロコブかとでも思ったか、バカ。 私は気にされたくない。これは日本語がおかしいかも知れないが頭がおかしいのだから仕方がない。 とにかく気にされたくない、ほったらかしにしてほしいのである。 「自分がされて嫌なことは他人にもしないように」 と松原小学校の上福元先生が言っていた。私はその教えを忠実に守り、気にされたくないので何も気にならなくなってしまった。 私に害が及ぶ場合は別だ。たとえばコレステロール伊藤の『マ○コ掻き』とか。これは人類のためにもほったらかしには出来ない。 まあいい。 どっちにしろ、細かいことが気になって気になって気になって仕方ない男は、気にされたくて気にされたくて気にされたくて仕方ない女の子とつきあえば万事上手くいく。 そして、血の色のピアスをよろこんでする女を、スパゲッティを食った後のようなテカテカの唇でない女を、タバコの数もほどほどの女を、浮浪者のオッサンを毛嫌いする女を、そんな女の子を見つけだして一発かませばいい。 残念ながら私はそんな女ではない。 それだけのハナシである。 アナタについていきたい。の反対 「オレ様についてこい」 などと言う男も今どき珍獣あつかいされるとは思うが 「君についていきたい」 とほざく男はいったい何に属するのか。 そしてまた、そう言われた女は天然記念物に等しいのではないでしょうか。 こんにちわ、おとといそのブツになりました土屋です。 おかげで高熱にうなされて現在進行中です。 私は弱い人間というものがキライである。甘えてるとしか思えない。 あえて差別的に言えばケンカに弱い男が私は嫌いである。セックスに強い男は大好物である。 精神的に弱い男はもっと嫌い。ボクちんナイーブなどとふざけたことを抜かしてそれをウリにしてる男は異次元の生物(生殖器ナシ)だとしか思えない。 しかし、私はバカだがカバではない。人間が象より弱いことくらいは知っている。 鉄の心臓を持つと言われた私だって弱い。とくに首筋あたり。 問題はズルさだ。 強い人間はイロイロと大変なのである。 まずケンカとなるやすぐにかりだされて人を殴ったりまわし蹴り食らわしたりしなければならない。殴ったそのコブシも弱い人間と同じ骨や筋肉や神経やらがこんがらがって成り立っている。痛いのである。 女の子にフられて 「かあちゃ〜ん!」 と泣きたいところをグッと我慢。辛いのである。 力仕事はまかされ、強風の中先頭を切って立ち向かい、予防注射はいつも一番、組み体操の人間ピラミッドでは一番下、カレーの毒味もさせられる、それが強い(とされる)人間だ。ホラ大変。 人はそれほど強くもないが、実は弱くもないはずだ。肝心なのは食いものだ。豚レバーのプロテイン煮込み(ニンニク風味)をお勧めしたい。ココロを込めて愛を込めずに。 HOME>DIARY>TEXT |