オイシイ体験はゲロの匂いがした 峯 妙介 とても不可解なことが起こった。笑止千万だ。 シェーンの今までの常識では考えられないことだ。しかしまあ、常識とは名ばかりで「オレサマの常識は日本国民の非常識」を身をもって体験しているシェーンのこと、たいした問題ではないことは明白。 シェーンはめずらしく女を部屋に連れ込むことに成功した。青白い肌を持つ美しい女だ。連れ込んだというよりもむしろ誘拐とも落とし物拾得と言ったほうが的を得ている。 ところは渋谷。シャッターの閉まった「天津甘栗」の前で、爆睡しながらゲロを吐いていた寝ゲロ女を引きづりながら代々木八幡のここまでやってきた。だんだんと減少の傾向にあったものの、引きづられながら女はなおもゲロを吐く。ゲロは「天津甘栗」の店先からシェーンのアジトであるマカロニホウレン荘まで続いていた。 「アシがつくな」 シェーンはそんなことを考えていた。 「名前も吐かせよう」 そんなことも考えていた。 「やりながらゲロを吐かれたらやだな」 そんなことは考えなかった。 寝ゲロ女は最後のゲロと一緒にもやしと名前を吐いた。その名もハニー。お尻は軽いが小さくはない。 全てを吐いてくれたハニーに向かってシェーンは提案した。 「よしわかった。ハダカのつきあいをしよう」 「名案だわ」 パツンパツンの服を脱がせるのには苦労したが、パンツを脱がせるのはいとも簡単だった。 ハニーの受け入れ体制は整っている。シェーンも突撃準備は万全だ。 木造二階建て築三十二年日当たり最悪大家謎の独身中年姉妹の建築物はぎしぎしと音を立て、あまりにも風情なしの性交に成功。読者サービスは意に反するのでこの行為に関する描写はこの辺にしておく。計二十分のハダカのつきあいは無事終了した。 良く考えてみれば別に不可解でもなんでもない、ただの実話であった。くやしいか。 作・峯妙介
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