おしるこ姫のお悩み 峯 妙介 おしるこ姫は悩んでいた。二十一年間生きてきて、こんなに悩んだことがあっただろうか。確かに悩みはあった。 「わたくしはもしかして家庭に幸せを呼ぶというザシキワラシじゃないかしら?」 「この目玉が、本当は口だったらどうしよう」 いや、今までの悩みはケジラミのようなものだ。 姫は恋をした。相手はゲチョロンテテイサッサマンガン国の王様だ。 下女の持っていた文庫本「あなたの恋を叶える三つの法則」を無許可で永久拝借し、やや興奮気味に11画以上の漢字以外は全て読破。 ほとばしる愛を伝える為には恋文をしたためることが有効とわかると早速全世界から「HOW TO本」を取り寄せるやいなや、執事を脅して一晩中朗読させ、睡眠暗記方に大成功した錯覚に陥る。 そして恋文をしたためたおしるこ姫。成り行き上封筒に入れる。 あら! ちなみにこの「あら!」は、驚きの「あら!」であって、知る人ぞ知る隠れたヒット商品・海苔つくだ煮の「アラ!」とはなんの因果関係もないことを報告しておかねばなるまい。 話題は戻る。今世紀最大の悩みはここで発生した。確か『おしとやかな恋文の書き方・其の二十一』には、「宛名には様をつけませう」と書いてあった。 ガーン!これじゃあ王様様じゃないか。カ……カッコワルー。 しかも『おしとやかな恋文の書き方・其の百五十六』によると、「同じ言葉を重複して使うのはやめませう」とも書いてあったではないか。 おしるこ姫は悩みに悩んだ。 そうこうしているうちに王様はおしるこ姫のライバル・あんみつ姫の猛アタックNO.3によって結婚を決意。 おしるこ姫は失意のどん底でおしるこの食い過ぎによって自殺を図るが未遂に終わる。そしておしるこを世に広めようと巡業の旅に出たのであった。 作・峯 妙介
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