プロレス情死考 エル・ナカタ はしがき プロレスとはショーである。ショーと言われるどのジャンルにも言えることが、プロレスの中には全て詰まっている。初めての人は自然体で観ればいい。プロレスを観もせずにハナからバカにする人達は、1度でいいから会場に足をはこび生でプロレスを観てほしい。それでダメと伝うならバカにしてもらっていい。いや、喜んでバカにされよう。観るポイントは何でもいい、とにかくプロレスを楽しんでくれれば。そして、プロレスによって自分自身のイマジネーションと戦える日がくるといいなと想いつつロックアップ。 ・クリス・ベノイのサイドバスター <世界ジュニア界の怪物、新日本プロレスのマット上ではW・ペガサスとして活躍。第1回スーパーJカップ覇者、元IWGPジュニアヘビー級チャンピオン。現在は、WCWで活躍中> W・ペガサスの技は出す技の全てが、フィニッシュホールドに成るようなものばかりであるが、試合の中盤で放つサイドバスターの威力はあまりにも説得力がある。他のプロレスラーが出すサイドバスターなどただの繋ぎ技にすぎず、観ていてもなんのインパクトも残らない。小さい体で繰り出すペガサスの技の1つ1つが恐ろしい程の破壊力に充ちているのは、日頃のトレーニングの賜物であろう。ペガサスはフィニッシュホールドばかりがクローズアップされるが、試合中の細かな技、動き、たたずまいをじっくりと観賞していただきたい。WCWで活躍するのもいいけど、もう一度、レベルアップした新日ジュニアのムーブメントの中で、今度はクリス・ベノイとして暴れ回ってほしい。 ブザリアシビリ・ラマジの投げ <リングスグルジア所属。グルジアの格闘技 「チダオバ」 の強豪。リングス参戦は5回程度。現在は怪我のためリングスマットから遠ざかっている> リングス設立当初、リングスグルジアが前田への刺客として送り込んできたレスラーである。半笑いでリングに入場し、打撃の防御も全く出来ず、試合中前田に連射蹴りをくらっていたが、突如として前田に掴みかかり、プロレス会場では観られないような不自然な角度での投げをくりだした。無防備だった前田は肩口から真逆さまにマットにめりこんだ。プロレスを見慣れている者にとってラマジの不自然で危険な投げは恐怖心を植え付けられるには十分な説得力をもっていた。異常に打たれ強かったし、面白い顔だったし、シュワルナゼ書記長(役職はソビエトの頃)のSPもやってるし、かなりインパクトのある格闘家だった。リング上での底知れぬ余裕の笑顔をまた観たいものだが。 中西学のハイジャックバックブリーカー <新日本プロレス所属。永田、石沢と共にアマレス三銃士(プロレスラーなのに)として売出される。ヤングライオン杯優勝後、WCWでの海外修行を経て「クロサワ」の名で帰国> 私はハイジャックバックブリーカーが好きだ。ドン・レオ・ジョナサンをタイムリーに観ていた訳ではないのでジョナサンを好きだったということでもない。単純にハイジャックバックブリーカーという技名が好きだったのである。日本語名が飛行機強奪式背骨折りというのもたまらない。なんて素敵な、なんて想像力を掻き立てる技なんだ。でも今のプロレス界にこの技の使い手はいないし、、、などと思っていたら、中西がやってくれた。後楽園のタッグの試合で野上に極めたハイジャックバックブリーカー、想像どうりにスケールのでかい美しい技だった。フィニッシュホールドとしては申し分の無い技である。現在のプロレス界にこの技を蘇らせた中西に魅了されっはなしである。 P・S この技が出た時、技を極めているレスラーはもちろんのこと技を極められているレスラーのみじめさ加減も充分に観賞していただきたい。 キングス・クロスのフリフリ <みちのくプロレス主催、第1回覆面ワールドリーグ戦にイギリス代表として参戦。 その他はおおむね不明、多くの謎に包まれたレスラー> 覆面レスラー世界一を決めるべく、みちのくプロレスで行われた第1回覆面ワールドリーグ戦にこの男はやってきた。その日はサスケVSデルフィン というこのリーグ戦の優勝戦進出を左右するような好カードが組まれ前座の試合から会場内はヒートアップしていた。中盤の試合に差し掛かった所でキングス・クロスは登場した。対戦相手がだれであったのか?キングス・クロスがどんな技を仕掛けたのか?はたしてどちらが勝ったのか?などという事は今は一切覚えていないが、なのに何故このレスラーに魅了されたのか? 答えはフリフリだった。試合前のコール時、試合中に技を極めるたびに、試合後花道から消えるまで、このレスラーは左手の甲を腰に当てて右手を真上に伸ばし、その手を上品に振っていたのである。ここ一番には丁寧にもお辞儀付きでこのアッピールを繰り出していた。プロレス界にはアピールだけのレスラーも数多くいるがキングス・クロスの英国紳士の風情漂うこのアッピールは私の胸を鷲掴みにし切なくも爽快な気分にさせてくれた。キングス・クロスの来日はこの1回だけで現在英国の何処に居るのかも不明である。 あとがき プロレスを愛するが故に緩やかに狂っていっても致しかたあるまい。 いや、こういう生き方ができる自分に陶酔してもいい筈。 受けの美学を極めるのもどう? 心を揺さ振ってくれるレスラーが多く出現しますように 作・エル・ナカタ(必殺技 プレーンクロー)
Illustration nakki |