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    6月28日?曜日
    すったもんだしたり、ファックした男子の誰の誕生日も覚えていないが、今日は小学校の時からずっと大好きだった男の子の誕生日だ。 (参照テキスト

    彼を追いかけまわすのを日常としていた私の俊敏さは、卒業間近さらにパワーを増した。
    なんとしてもサイン帳を書いてもらうためだ。

    「わかったよ。書くよ。じゃあなんて書けばいいの」
    そのコトバを聞くまでに何日かかったか。
    「なんでもいいから!誕生日とか趣味とかイッヒッヒ好きな子とか‥‥‥ぐふふ」

    毎日学校帰りに彼の家によって催促。彼のオカンにも協力を申し出て、約一週間後にサイン帳は戻ってきた。
    「書いたよ。もう書かないからな」
    「ぐふふふふふ」

    ものすごい筆圧ででっかく力強く、ページいっぱいに誕生日だけが書かれていた。

    それでも私は、ただの嫌がらせだとは微塵も思わず、ただただ
    (私に誕生日を覚えてもらってプレゼントをもらいたいんだな)
    と信じて疑わなかった。そしていつまでもいつまでも、今にして思えばものすごく不気味に
    「ぐふふふふ」
    と笑っていたのである。

    6月28日





    6月26日?曜日
    相談:
    「ちょっと相談に乗って欲しいんだ」
    と言うセリフが、日常会話として成り立っているとは思わなかった。
    かっちょいい男にそう言われるより、
    「ちょっと俺の上に乗って欲しいんだ」
    とゲス野郎に言われる方がよっぽどマシだ。
    そもそも相談ってなんなのか。そのほとんどは冗談ではないのか。

    ちなみに私の友人たちは
    「アソビにだけは絶対に言わないでよ。絶対だよ絶対だよ絶対だからね」
    が合い言葉のようになっていると言う。


    6月23日?曜日
    ミレニアム選挙:狂喜狂乱のババアたち
    私が楽しみに楽しみに楽しみにしていた、
    「○○さんのご健闘をお祈りいたしますっ!」
    「ありがとうございますっ!○○さんのご健闘をお祈りいたしますっ!」
    「ありがとうございますっ!」
    の声を、今回は一回も聞いていないのである。

    うそつきだと言うことがバレバレだからやめたのだろうか。それにしても寂しい。

    私は選挙カーを発見するたびに、近づいて誰彼問わず両手で手を振る。
    マッハなスピードでそれを察知し、あっち側のシートに座っていたおばちゃんまで身を乗り出し、ものすごいボリュームで
    「ご声援アリガトウございまーすっ!」
    とシャウトする一流喜劇を観るためだ。

    普段なら、私など小汚い虫けらでも見るような顔で見るババアがものすごい勢いの笑顔で寄ってたかって気が狂ったように大喜びするのである。どうしてクスリもやらずにあそこまでハイになれるのだろうか。秘訣を聞きたい。教えてウグイスババアーッ!


    6月22日?曜日
    なんじゃこりゃーな日
    20分くらい前にウチを出ていったばかりの五十嵐朝日くんからケータイ。
    「救急車がこないんだけど‥‥‥」
    「はあ?」
    と言う間もなく、プッツリと切れてしまったので私はしばらく考え込んでしまった。
    それにしても奥が深すぎる。
    くっそー深すぎてよくわからない‥‥‥。
    高等、もしくは下等すぎるジョーダンだと思っていた。

    しかし、実際にリアルタイムで彼は救急車を待っていた。

    バイクの少年と、バッティングメガヒット。
    血塗れになりながら本物のサイレンを待っていたのである。

    関係ないけど、たとえば信号待ち。もうすぐ青に変わる直前。並んでいる車の窓の中へ吸いかけのタバコを投げて遊ぶのはもうやめよう、と、なんとなく思った。


    6月15日?曜日
    祝・出産
    「アナタに会いたい」より、「コレステロールさんに会わせて!」と言うメールの方が多いのが、我が人生のなかで一番解せないことであるが、まあいい。

    『でたぞ』
    と連絡があったが、実際には腹を切って取り出された、高円寺で一番強力な珍獣を母に持つベイビー。

    以前に名前どーすんの?と聞いたことがある。男でも女でもアキラにすると言っていた。
    私はすごくいい名前だと思ったが、それを悟られないように小バカにした感じで「ハハハ」と笑っておいた。

    2〜3日前、お腹がすいたので彼女の家に行った。ドアを開けた瞬間
    「ごはんはありません」
    とけん制をかますコレステロール伊藤ちゃん。
    「いまから行く」と私が電話したあとすぐさま急いで釜のメシを、しかもムリヤリ食べてしまったと言う。
    「なんで」と言うと「わかんない。条件反射かな?」とヌカした。

    そういやあ学校の帰り、毎日毎日おやつに『伊藤家のごはん』を食べていたのでコレステロールママに
    「家からコメを持ってこい!」
    と言われたことがある。
    この親にしてこの子あり。そしてまたその子供はいかに育つのか。私はその課程を、やっぱりこれからもごはんをタカりながらじっくり観察していくつもりだ。

    実家に帰ってオカンから、私が帝王切開で生まれたことをはじめて聞かされた。
    「でもさー手術の日が決められちゃうなんてなんかヤダよー。医者の都合で誕生日が決まるってことじゃん。動物占いとかが決まっちゃうんだよ。そこでタヌキかペガサスか決まっちゃうんだよ。やっだー」
    「決まってるわよ。ブタでしょ?」
    「は?」
    「だって伊藤ちゃん、ブタでしょ?」

    なんとなく、私は生まれて初めてコレステロールをかわいそうだと思った。

    ところでアキラのパパは、新聞勧誘の兄ちゃんが一番有力だと思うがどうだろう。


    6月14日?曜日
    ロックンロールな日々?
    二万枚のTシャツにそそのかされRock'n Roll BAZAAR2000に行く。オークションではジャクソンファイブの小汚いヤツが一番高かったがいくらだったかは忘れてしまった。なぜなら神谷町公園に住んでいた浮浪者のオッサンが着ていたシャツととっても似ていたから。 オッサンはよく公園の掃除をしていた。
    スヌーピーのシャツがあまりにもかわいかったので、トレードを申し出たがていねいに断られた。Tシャツ5枚でも、3000円でもダメだと言った。
    私はそれからしばらくの間、公園の掃除をしたりしてオッサンの気が変わるのを待つことになるのだが、冬になったので寒さとともにあきらめてしまったのだ。


    6月7日?曜日
    ○○な人:自己満足コマーシャリズム
    たとえば、
    「ボクは腹一杯になると寝てしまう人なんですよ」
    とか言われると「あっそっ」って気分になります。「だからなに?」「それがどーした」とか。なんないかもしんないけど私はなります。そんなときは「ほへーっ」と頬杖をついて、たばこのケムリをまあるくする練習をした方がよっぽど得るものが。

    それがまた、「ボクってポコチンがふたつもある人なんですよ」とソソる発言をされたり、「私ってわら人形な人だからー」と意味深な言動をされたなら日頃から寡黙な人として有名な私もだまっちゃいられませんが、まあほとんどは他人にとってはどーでもいい、ホント鼻くそみたいな、いやそれではあまりにも鼻くそに失礼失礼っ!

    しかし、今日私はなにげなくこんなコマーシャルをされたので参考にするように。
    「ボクは腹いっぱいになると寝てしまう人として生きてるんですよ」

    えっー!腹一杯になると寝ちゃう人として生きてんだーすっげーなー!
    ってキモチに恥ずかしながらなりました。なかなか動かない私のココロをビクリとさせたお人はなかなかな人物で名前を中山と名乗った。日本語は奥が深い。中山も彫りが深い。でもヘンな顔だった。


    6月6日?曜日
    レッドアイズパニック:
    ここ数日、私の目は真っ赤になった。バカにすんなよ、そんじょそこらの充血などと言う生やさしいモノではない。左の白目は全て深紅に染まり、近所中のガキを震え上がらせ株を上げたほどだ。
    赤い目の動物があまりカワイイとは思えないし、会う人会う人
    「ど、ど、ど、どーしたの?」
    「またなんかやらかした?」
    「うぎゃ!」
    とかキチガイじみたことを言うので昨日はものすごい重症なフリをしながら眼科に行ったが軽くかわされてしまった。かすかに期待していた眼帯どころか目薬ひとつくれない。まああんな、『メモリーグラス』を歌っていたオカマ歌手にそっくりのヤブ医者はほっておいて、赤目の私はこの赤目によってあるギモンが浮かび上がったのである。

    また一歩魔女に近づいたホラーなこの顔を、あの男には見られたくない。
    男の小さな心臓はさらに小さくなって、右心房あたりが機能停止してしまう。ドギーマギーな彼をこれ以上弱らせてはいけない。そんな天使のようなことをデビル顔で考えた。

    今すぐこれを見せつけたい男が遙か海の向こうにいる。アタシを嘲笑ったヤブ医者にメガトンパンチを数発食らわせて方々の眼科に「今すぐ治せ」と掛け合うはずだ。その狂人を小さなガキのように傍観することで、アタシの血液は正常な流れを取り戻すことが出来る。あんなマッドマックスを追放したのはアタシだが、でなければこっちまでとっくにイカれていただろう。

    私が殴られようが事故ろうが車から飛び降りようがまったく動じない男から、思いがけないコトバが聞けた。
    「うわっ病院行ってくればあ?」
    赤目になると視力まで落ちるのか。ヤツが狼狽しているように見える。
    「明日行った方がいいよ。キモチわりいなあー」
    視力は落ちてなかった。そうか。気持ち悪いのか。男は血に弱い。

    見せたい人と見せたくない人。
    それから血に弱い人。

    私がほんとうに好きな人はいったい誰なのか。そんなことを考えるのはやっぱり赤目だからだろうか。赤目だからだろう。



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