ギリギリセーフだと思う。
存分にセーフだと思う。
今日のまとめ
「人形町はいい町だ」
びっくりするほど愛想のない熟女のいるマクドナルドで、トイレに閉じこもったまま出てこない気の触れた婆がいた。(どう気が触れていたかは割愛。外見も、発する言葉もものの見事に狂人的だった)「ババア!早く出ろよっ!」と、ドアをガンガン叩いて追い出す妄想にふけっていたら、私の中からすーっと抜け出した分身が、無言でドアを執拗に叩きまくっていた。私はうっすらと透明な自分の背中を、たしかに見た。狂人のそれだった。あれは、妄想か幻覚かそれとも白昼夢だったか。婆はさっきまで私の隣に座っていたのだった。そして一階にまで届く大声で独り言を言っていた。やはり狂気は伝染する。あーするする。私は店を出た。邪気を祓うために、人形焼きを存分に食べて生気を取り戻すことにしたが、首を左に右にと伸ばし、人形焼きやの奥の間を覗いたことは、とても名誉なことだ。名誉ってなんだろう、とにかく名誉だ、と思った。私は名誉にとても満足し、つまみぐいだけして、そういえば人形焼きはあまり好きではなかった、死んだ祖母の好物だった、あれ?おばあちゃんの命日っていつだったろう、おじいちゃんが「あー今日はいいー天気だなあー」と空を見上げて言った日だったことだけは確実だけれど、と思いながら地下鉄に向かった。案の定迷った。